大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)2216号 判決

被告人 加藤登

〔抄 録〕

よつて本件記録を調査し並びに当審における事実の取調の結果を総合すると、原審並びに当審証人杉山善四郎、勝又嘉一、飯田又一の各供述及び原審並びに当審における被告人の供述の一部を総合すれば、被告人は本件当時沼津市議会議員であつた者であるが、同市大門町飯田時計店飯田又一から同人の滞納している市税及びその都市計画事業の遂行により受けた損害補償の問題につき同市当局と交渉するよう依頼されていたので、その交渉の為、昭和三十年四月四日午後二時頃同市役所助役室に同市助役勝又嘉一を訪れたところ、同助役は事情を聴取するため同市吏員徴税課長杉山善四郎を右助役室に呼び寄せ、同課長から飯田又一の市税滞納の事情を説明しなお都市計画による補償の点については補償はできない旨を報告しこの点については都市計画課長を呼んでも無益であると附言したところ被告人は右杉山課長がその所管外である都市計画課の事項について飯田又一にとつて不利な報告をしたのを不満とし杉山善四郎と口論を始めたので勝又助役は当日不在であつた同市都市計画課長の報告を聞くこととし当日の会見を打切り他の会合に出席するため前記助役室を去つたが、その後も被告人と杉山善四郎は口論を続け興奮の余被告人は判示のように杉山善四郎に暴行を加えたものであることが認められる。これによつて見れば被告人は杉山善四郎の勝又助役に対する報告を不満としてこれに暴行を加えたものではあるが被告人が暴行を加えたのは助役が一応杉山善四郎の報告の聴取を終り当日の会見を打切つてその室を去つた後のことであるから、少くとも被告人は杉山善四郎の公務執行中これを妨害する認識の下に判示暴行を加えたものとは認め難く、また本件記録を調査するも本件行為が右杉山善四郎をして飯田又一のため有利な処分をなさしめるためなされたものと認むべき証拠はないから、被告人の所為は単純なる暴行罪を構成するに過ぎないものと云うべきである。しかるに被告人の所為を原判示のように認定しこれを公務執行妨害罪を構成するものとした原判決は事実を誤認した違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから論旨は理由があり、原判決はこの点において破棄を免れない。

(坂井 山本長 荒川)

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